【CASHERO】本音を言うと微妙?絶賛されてるドラマなのに!
平凡なサラリーマンのサンウンが、手に握った現金の分だけ力が強くなる能力を手にしたことから始まる、生活密着型ヒーローアクション『CASHERO~ヒーローは現金を持つ~』。
生活費と超能力の間で揺れ動く「等身大のヒーロー」の姿がユーモラスです。
「絶対おもしろいやつじゃん!」とワクワクしながら開封したのですが、いざ見てみると微妙でした。
そこで今回は『CASHERO~ヒーローは現金を持つ~』の微妙に感じたところを「3つのポイント」で整理してみます。
※この記事に書かれている感想はあくまでも筆者の個人的な考えです。
『CASHERO~ヒーローは現金を持つ~』とは?
まず軽く作品情報をおさえておきます。
- 原作:team befarによるカカオWEB漫画『캐셔로(ケショロ)』
- タイトル「CASHERO」:「CASH」と「HERO」を合わせた造語
- 特徴:お金=力というストレートな設定
- ドラマ版はドラマハウススタジオとSLLが制作
- 演出:イ・チャンミン
- 脚本:イ・ジェイン&チョン・チャンホ
- 配信:Netflixで2025年12月26日から独占配信
- 構成:全8話
主人公:カン・サンウン(イ・ジュノ/2PM)
マイホームを夢見ながらコツコツ働いてきたごく普通の公務員が、ある日父から「現金の額に比例して超人的な力を出せる」という能力を1万ウォンで受け継がされます。
ただし、力を使うたびに手持ちの現金は物理的に消える。
ここがすべての始まりです。
ヒロインはサンウンの恋人キム・ミンスク(キム・ヘジュン)。
酒を飲むと能力が発動する弁護士ピョン・ホイン(キム・ビョンチョル)、念動力系の能力を持つパク・ウンミ(キム・ヒャンギ)など、超能力を持った仲間たちが集結。
そんな超能力の仲間たちが悪の組織と戦うヒーローアクション物です。
ここまでは、期待値高めで見始めた人が多いと思います。
私もその一人でした。
『CASHERO~ヒーローは現金を持つ~』が微妙な理由3選
微妙な理由①「家計簿」の影がつきまとう

一番の理由は、「能力の対価が現金」という設定です。
「現金が減るヒーロー設定」が斬新で面白いと思って見始めましたが、いざ観ているとなけなしのお金を使って人助けをするところにだんだん疲れました。
主人公は高給取りでも財閥でもなく、住宅ローンに悩むごく普通のサラリーマンです。
サンウンがバスの転落事故で乗客を救うシーンは母親からもらった3000万ウォンが一瞬で消えてしまいました。
ジュノはすごくかっこいいのですが、同時に「お金が!」と頭を抱えたくなった方が多いと思います。
しかもそのあと、ミンスクに「なんでそんなにお金使ったの!?」と責められるのです。
命よりお金を優先しているように見えてしまうこのやり取りも視聴者としては切ない。
もうここで「ミンスクには共感できないな」なんて思っちゃいましたよ。
現代社会の「お金がないと何もできない」という現実を、ヒーローものに落とし込んだセンスはすごいと思いました。
ただ、その生々しさのせいで、視聴者も一緒に財布を握りしめているような気持ちになってしまう。
「サンウン、今いくら持ってるんだろう」「これ以上お金消えたらどうなるの?また怒られるよ」と、ずっとずっと心配しながら見ることに。
ヒーローものに私たちが求める感情はスカッとした爽快感です。
しかし、『CASHERO』は視聴中ずっと、どこかに「家計簿」や「マンションの頭金」の影がつきまとう。
この生活の苦しさとヒーローとしての愉快さのバランスが、うまく噛み合っていないように感じてしまいました。
微妙な理由②ヒロインと悪役に乗り切れない

2つ目の違和感は、人間関係の描き方です。
ヒロインと悪役に乗り切れず、「人間ドラマ」としての厚みが足りません。
キム・ミンスク(キム・ヘジュン)
公式の紹介では「数字に対する非凡な感覚を持ち、サンウンを支える重要なオリジナルキャラクター」とされています。
ところが実際のドラマでは、どうしても“拝金主義の恋人”という印象が強いです。
バス事故のときもそうですが、命より先にお金を気にするリアクションが続いて、人として好きになれないなと思いました。
イ・チェミンの無駄使い
そこにさらに、「悪役側」の薄さが重なってきます。
中盤から登場するチョ・ナダン(イ・チェミン)は、サイコパス的な異能キャラとしてかなり存在感があります。
同じく『暴君のシェフ』で共演していたカン・ハンナが演じるアンナは、彼の姉。
かつては「王と側室」という関係性で対峙していた2人が、今度は「悪の姉弟」として再タッグを組むわけです。
『暴君のシェフ』のとき、イ・チェミンは王の喜怒哀楽を濃厚に演じていて、「イ・チェミンはすごいな」と感じた方も多いと思います。
そんなイ・チェミンが演じたダンは「飄々としたサイコパス」として表面的な怖さはあるのに、
「なぜこういう人格になったのか」「何を目指しているのか」がほとんど語られません。
アンナも、とにかく悪女として描かれる場面が多く、背景や心情の厚みが足りないまま、物語がどんどん進んでいきます。
だからこそ、『CASHERO』での扱いは少しもったいなかったです。
韓ドラ沼民は、脇役の人生まで丁寧に描いている作品に魅力を感じます。
それに慣れていると、『CASHERO』の人間ドラマはどうしても薄味。
ここが、「微妙だった」と感じる2つ目の大きなポイントだと思います。
微妙な理由③構成と演出のバランス

3つ目は、構成と演出のバランスの問題です。
『CASHERO』は全8話なので韓国ドラマとしてはかなりコンパクトな方ですよね。
その8話の中に、
・現金と能力の設定
・悪の組織との対立
・異能仲間たちの紹介と活躍
・ラスボスの正体と目的
・さらに時間操作能力まで登場する終盤のどんでん返し
これを全部詰め込んでいるので、基本的にテンポは速くて、飽きずに見られます。
Netflixで一気見するにはちょうどいい構成だとも感じました。
制作を担当したSLLの公式YouTubeなどでも、「建物まで含めた大量のCGを使った」「VFXにかなり力を入れた」といった話が出ていて、たしかに映像面のクオリティはかなり高いでしょう。
ただ、そのぶん削られてしまったものもあります。
一番大きいのは、「キャラクターの感情の積み上げ」です。
ピョン・ホイン(キム・ビョンチョル)
壁を通り抜ける能力を持っていて、その代償として大量の酒を飲まなければならない。
でも、肝臓はすでにボロボロという、かなりブラックな設定のキャラクターピョン・ホイン(キム・ビョンチョル)。
医師から病状を告げられるシーンは本当に重くて、酒好きの人なら余計に刺さると思います。
飲み過ぎて肝臓の数値が悪化した経験がある方にとっては、ホインの顔色や医師の言葉が妙にリアルで、ちょっと笑えない気持ちになったことでしょう。
キム・ビョンチョルは『トッケビ』『SKYキャッスル』『医師チャ・ジョンスク』など、どの作品でもクセのあるけど記憶に残るおじさんを演じてきた俳優です。
だから本当は、彼の過去や葛藤、サンウンとの関係性をもっとじっくり描いても面白くなったはず。
なのに、アクションとバトル展開が前に出るあまり、ホインのドラマがサラッと流れていました。
そして極めつけが、終盤に登場する「警察官キャラ」の反則です。
これまで伏線も張らず急に飛び出したこのキャラ。
「ここでそれ使うの?」というくらい、かなり都合よく出てきます。
それまで積み上げてきた緊張感や「やるしかない感」が、時間リセットでふっと軽くなってしまい「何でもアリ…?」と感じてしまいました。
『CASHERO~ヒーローは現金を持つ~』良かったところ
ここまでイマイチな部分を3つ挙げてきましたが、「全部ダメ」というわけではなく、個人的に好きだったポイントもあります。
俳優や女優が最高!
身銭を切って人を助ける、現代版「幸福の王子」みたいなヒーロー。
しかも、ジュノが泥臭くてボロボロになりながら、それでも人を見捨てきれないサンウンを演じていて、「きれいなスーツ姿じゃないジュノ」が見られるのは新鮮でした。
パンを食べ続ける念動力のウンミ(キム・ヒャンギ)も、チームの潤滑油としていいアクセントに。
ホイン(キム・ビョンチョル)の「酒=燃料」設定は、かなり好き嫌いが分かれると思うものの、私はツボでした。
また「最高の超能力者」としておじいさんが登場するのですが、それがキム・ウォネだったり、階段を大きな荷物を抱えて上がってるハルモニがキム・ヨンオク。
また悪役にイ・チェミン、カンハンナという豪華キャスト。
チョ・ナタンの父で「凡人会」の会長がキム・ウィソンというところにもうなりました。
悪役を演じたら国宝級の役者です。
分譲事務所広報パネルのモデルにはキム・ジソクまで登場。
火を操る超能力者としてチョ・ボアも!
出演者のギャラだけで莫大な製作費をかけていることが想像できますね。
まとめ
周りで「めっちゃ面白かった!」という声を聞くと、「自分の感想がおかしいのかな?」と不安になることがありますよね。
でも『CASHERO』に関して言えば、
- 斬新な設定と派手な映像とジュノのファン → 高評価
- 人間ドラマの厚みやラスボスの描写 → 物足りない
この2つがハッキリ分かれている作品だと思います。
なので、「設定とCGは好きだけど、ドラマとしてはイマイチだった」と感じるのは、かなり自然な感想と言えるでしょう。
もしこれから視聴を考えている人に一言いうなら、
- 8話でサクッと見られる超能力バトル
- お金と超能力のアイデア
- ジュノの新しい一面
- CGアクションを楽しむドラマ
- 人間ドラマの深さはあまり期待しすぎない方がいいかも
こんな感じで見始めると、「思ってたのと違う…!」というガッカリ感は少しやわらぐと思います。