Netflixで配信された韓国映画『大洪水』

見た人の中には「パニック映画かと思ったら、なんかSFっぽい…?」と思われた方がけっこう多いです。

私も最初、パニック映画だと思って見始めたのですが、中盤あたりから「あれ?これってもしかして…」って、ちょっと頭が追いつかない感じがして、びっくりしました。

そこでこのページではNetflixで配信中の韓国映画『大洪水』の謎について詳しく解説します。

ネタバレが含まれておりますので、これから視聴予定の方はそっとページを閉じてください。

視聴後に答え合わせにまた戻ってきてくださいね。

『大洪水』はSFだった!

確かに、タイトルも「大洪水」だし、キム・ダミ演じるアンナが高層マンションで水に閉じ込められて、息子を守ろうとするシーンは、まさにディザスター映画の王道です。

でも、じわじわと「これは現実なの?」と違和感が湧いてきます。

Tシャツに数字が刻まれていて、それがどんどん変わっていくとか、水の中なのにデジタルノイズが見えるとか。

実はこの映画は「SF×タイムループ×母性」という作品でした。

そのため、SNSでは「難しすぎて2回見直した」という感想がたくさん。

でも、その「謎のまま終わった」感じが、逆に余韻を残しています。

謎のまま終わった3つの疑問!

① 結局『大洪水』はSF映画?

はい、正直に言うと、『大洪水』はSF映画です。

災害パニックの要素はありますが、本質は「仮想現実の中でのタイムループ」をテーマにしたSFスリラー。

物語の舞台になっている「水没するマンション」は、現実の世界ではないのか、もしくは母と子の最後の記憶だと考えられます。

地球はすでに大洪水で壊滅寸前か、あるいはすでに滅びていて、人類は宇宙船の中で生き延びようとしている。

その中で、AIが「人間らしい感情」を学ぶために、アンナの記憶を使って何度も同じ日を繰り返しているようです。

韓国映画『大洪水』の公式や、Netflixの説明文を見ても、「AIが人間の感情を学ぶために、ある女性の記憶をシミュレーションする」と明言されています。

つまり、私たちが見ていた「水の恐怖」は、現実の災害ではなく、AIが「母性」という感情を引き出すための実験だったのかもしれません。

アンナはどんな女性?

キム・ダミ演じるアンナは、AI開発者で、「エモーションエンジン」という、人間の感情をデータ化するシステムの研究者。

彼女の記憶が、そのAIの学習用データになっている。

だから、息子ジャインを助けるというミッションは、単なるサバイバルではなくて、「母としての愛」をAIに伝えるためのループだったのでしょう。

② なぜ何度も繰り返したの?

韓国SF映画『大洪水』で一番謎だったのが、「なぜ同じ日を何度も繰り返すのか?です。

水が上がって、脱出する、死ぬ、また目覚める…。

これは現実ではありえません。

ある日を何度も繰り返すタイムループというSF的な仕掛けを通して、母性、愛、そして人工知能の限界を問うているのです。

主人公アンナは、洪水が迫る一日を繰り返し、息子を助けるためにあらゆる手段を試します。

しかし、そのループがなぜ起きているのか、そしてなぜ何度も繰り返されるのか?

この点は映画の終盤まで明かされず、観る者に強い印象と疑問を残します。

ループの正体は?

映画の中盤で明らかになるのは、アンナの意識が宇宙船内のAIシステムに接続され、仮想世界を体験しているという事実です。

彼女が経験している同じ日は、現実の時間ではなく、AIが構築したシミュレーション空間。

つまり、洪水も、家も、息子も、すべてAIが作り出したデータの世界です。

このAIは、人間の「母性」という感情を完全に理解しようとしています。

しかし、AIは論理とデータでしか物事を捉えられず、人間が「絶対に助ける」という強い感情で行動する理由を、理屈では理解できません。

そこでAIは、アンナに「息子を絶対に助ける」という極限の選択を、何度も繰り返させるのです。

その行動パターンや感情の変化をデータとして収集し、母性という感情の本質を解明しようとしている。

Tシャツに書かれた数字の意味

映画の重要なヒントとなるのが、アンナが着ているTシャツに刻まれた数字です。

この数字は、毎回数が増えていくことに気が付きましたか?

アンナがループを繰り返した回数を示していると考えられています。

最初に気が付いた時のTシャツに数字はプリントされていませんでした。

そして次の数字はたしか「4000番台」

そして「7993」「13417」

最後は「21499回」になっていました。

1回のループ=1日と仮定すると、21499回は約58年分に相当。

つまり、アンナは58年以上分の同じ日を、息子を助けるために繰り返し、何度も死んで、また目覚めて、また挑戦している。

この数字は、韓国映画ファンの間でも話題となり、「母親が子を想う愛の深さを、冷たい数字で可視化している」と分析されています。

AIにとっては「21499回も繰り返す」という行動の意味が理解できません。

しかし、アンナにとっては、ただ「絶対に助ける」という母の本能が、その膨大なループを駆動しているのでしょう。

謎のまま残る問い

それでも、映画はいくつかの疑問を明確にはしていません。

なぜAIは、アンナを選んだのか?
宇宙船の目的や、アンナの本当の身元は?
夫や子供の記憶は本物?
ループの終着点はAIにとって「母性の理解」で十分だったのか?

これらの問いは、映画のラストで完全には解き明かされず、観る者に「母性とは何か」「AIに人間の感情は理解できるのか」といった哲学的な問いを投げかけます。

『大洪水』はSFの枠を超えて、親子の愛と、人間らしさの本質を描いた作品として、多くの視聴者に深い余韻を残しています。

③ 最後はどうなったの?

「結局、アンナと息子はどうなったの?」

映画の最後、アンナはシミュレーションから抜け出し、宇宙船の中で目覚めます

傍らには、息子ジャインも新しい肉体で目覚めていて、二人は抱き合います。

そして、複数の宇宙船が青い地球に向かって降下していく…というシーンで終わる。

このシーンは視聴者それぞれの解釈があります。

1つは、「アンナとジャインは、AIと融合した新しい存在として、地球に帰還した」という解釈です。

肉体は滅びたけど、意識と記憶だけを宇宙船に保存。

その中で、AIが人間の感情を学び、新しい「人間」が生まれた。

つまり、アンナとジャインは、もはや純粋な人間ではなく、「人間+AI」の新人類だということです。

もう1つは、「アンナの意識が、AIの世界で理想の未来を見た幻」という解釈になります。

現実の地球はもう戻れない。

でも、アンナは「息子と地球で生きる」という希望を、AIの世界で実現させた。

だから、ラストはハッピーエンドというより、「アンナの中の期待や希望の世界」なのかもしれませんね。

パク・ヘス演じるヒジョについては、アンナを突き放すような行動も取るけど、それは「母性を引き出すための計算された演出」と考えられます。

でも、何度も彼女が苦しむ姿を見続けるうちに、AIの彼自身も「人間らしい感情」を持ち始める。

最後に「シェルターはどこにあるのですか?」と無線で聞いていましたよね。

このラストは完全に答えが決まっているわけではありません。

もっと他の解釈もあるはずです。

「あなたはどう解釈する?」という、開かれた結末になっています。

だからこそ、SNSでは「ついていけなかった」「最高傑作だ!」と両極端な反応が出てくるのでしょうね。

まとめ:『大洪水』は「母性」と「AI」の物語

『大洪水』は、タイトルだけ見ると「災害パニック映画」だと思って見始める方がほとんどだと思います。

私もそうだったのですが、実際は「母性とは何か? 愛とは何か? 人間らしさとは?」という、すごく深いテーマを扱ったSF映画でした。

  • 「大洪水」は、現実の災害じゃなくて、AIが人間の感情を学ぶためのシミュレーション
  • アンナが何度も繰り返すのは、「息子を助ける」という母の本能を、AIにデータとして残すため。
  • ラストは、アンナとジャインが新人類として地球に帰還するのか、それとも理想の幻を見たのか、はっきりとは言わない

だから、「よくわからなかった」「謎のまま終わった」と感じる人もいるけど、逆にそれが、この映画の魅力なのかもしれません。

もし「パニック映画だと思って見たけど、なんかSFっぽくて混乱した…」って思ってるなら、ぜひもう一度、「母性とAIの物語」として見てみてください。

きっと、最初とは違う感動が待ってると思います。