「暴君のシェフ」の王イ・ホンのモデルは、実在した朝鮮王朝第10代王・燕山君(ヨンサングン)です。
燕山君は、「朝鮮王朝最悪の暴君」として悪名高く、即位後は学問を嫌い、父である成宗王から信頼を得ていた士林派が粛清されるなど、権力闘争と暴政を重ねました。
このページでは歴史の真実とドラマの違いについて詳しく見ていきたいと思います。
『暴君のシェフ』の暴君イ・ホンのモデルは?
「暴君のシェフ」の王イ・ホンのモデルは、実在した朝鮮王朝第10代王・燕山君(ヨンサングン)です。
燕山君(ヨンサングン)は幼少期に母親である廃妃・尹氏の悲劇的な死を目撃します。
その事実を知らされた彼は激しい怒りに駆られて粛清を断行。
宴楽や奢侈に溺れ、恐怖政治を進めました。
1506年のクーデターで王位を追われ流刑となり、31歳で没するまでの波乱の人生は、ドラマのイ・ホンに重なる部分が多いですね。
ドラマのイ・ホンは?
ドラマでは、イ・ホンが母の死の真相を探り、孤独と苦悩を抱える人物として描かれ、単なる暴君像を超えた人間的な深みが表現されています。
燕山君の史実と比較しつつドラマの妙味を見ることで、物語をより楽しめるでしょう。
それでは次に、燕山君の母、尹氏(斉献王后)が廃妃となった理由とドラマでの描写の差異について説明します。
史実の廃妃理由
成宗(燕山君の父)は最初の正室を亡くし、側室の尹氏を王妃に昇格させました。
尹氏は嫉妬心が強く、成宗の寵愛を得るために他の側室たちに対して毒を盛るなどの陰謀を繰り返したとされています。
ある日、成宗が尹氏の部屋でヒ素を発見、これにより尹氏は寵愛を失い精神が錯乱。
怒りのあまり成宗の顔を引っ掻き、不敬の罪で廃妃となり王宮から追放されてしまったのです。
その後、仁粋大妃(成宗の母)が激しく廃妃を推し進め、1482年に死罪(賜毒)となりました。
燕山君はまだ幼く、この事実を知らされていませんでしたが、後に知ると激怒し関係者を処刑しています。
燕山君の母、廃妃ユン氏の処遇と死因には以下の史的根拠がありますのでご覧ください。
死因
権力闘争により大妃の命令で死罪(賜毒=毒殺)となったと史実ではされており、いわゆる処刑がなされたと伝わっています。
彼女の死は燕山君の幼少期に起こり、彼は母がなぜ死んだのか真相を知らず、成長後に激しい怒りと憎悪を抱く大きな要因となりました。
このように廃妃ユン氏の死は宮廷内の熾烈な権力抗争と復讐劇に絡んでおり、単なる病死ではなく、政治的に計画された毒殺だったとされています。
ドラマでの描写との違い
ドラマでは廃妃尹氏の陰謀や毒殺の描写がよりドラマチックかつ簡略化され、「秘密の死罪」や「王との確執」が中心に描かれています。
宮廷内での権力闘争や陰謀が誇張され、キャラクター同士の心理戦や感情が強調されることが多いようです。
歴史的な背景や大妃との関係、精神錯乱の詳細はドラマでは簡略化され、視聴者にわかりやすく感情移入しやすい形で展開されますね。
つまり、史実は複雑な宮廷政治の中で尹氏の振る舞いや大妃の影響が絡み合い死罪に至るリアルな出来事です。
しかし、ドラマは物語のテンポや感情表現を重視し簡潔に描かれています。
燕山君(史実の暴君)とドラマ『暴君のシェフ』のイ・ホンの性格の違い
史実とドラマでは主に以下のように性格の違いがあるようです。
燕山君(史実)
朝鮮第10代王で「朝鮮王朝最悪の暴君」と悪名高く、幼少期に母の廃妃と悲劇的な死に遭遇し、そのトラウマが性格の歪みに繋がったとされています。
少年期は真面目だったが、即位後は贅沢や宴楽にふけり、恐怖政治を断行してしまいました。
また、家臣や親族の粛清、庶民への過酷な政策など、数々の暴政で知られています。
1506年にクーデターで廃位され、流刑の末31歳という若さで亡くなりました。
イ・ホン(ドラマ)
燕山君をモデルにした架空の王、燕熙君として描かれています。
性格は苦悩と孤独を抱え、母の死の真相を探りながらわざと暴君を装う複雑な人物です。
暴君ぶりを見せつつも、料理を通じて変わり始める人間的な側面が強調され、視聴者から共感を得ています。
歴史を変えるために苦悩し、単なる悪役ではない深みのあるキャラクターとして描写される部分もあります。
つまり、史実の燕山君は生来的に暴君の性質が強く、放縦で暴政を行った一方、ドラマのイ・ホンは過去のトラウマや陰謀が理由で暴君を演じ、人間的な葛藤や成長が物語の中心となっています。
この違いはドラマのテーマである「歴史の再解釈」と「人間ドラマの深化」を表していると言えますね。
史実の燕山君にない主な創作要素
「暴君のシェフ」のイ・ホンの行動で、史実の燕山君にない創作された部分はこちらだと考えられます。
ドラマのイ・ホンの独自創作要素
母の死の真相を探るため、あえて暴君を装い、孤独や葛藤を抱える苦悩する人物として描かれていました。
「絶対味覚」という特殊な能力を持ち、料理を通じて人々の心を動かし、政治を変える重要な役割を果たす設定もドラマの創作要素です。
料理を武器に暴君の冷徹なイメージを和らげ、人間的な弱さや成長を描写されているところが人気になっています。
苛烈な暴君のイメージだけでなく、心の傷や改革に向けた努力も強調されており、ドラマ独自の人物関係や陰謀、感情の幅が深く掘り下げられているようです。
このように、イ・ホンは史実の燕山君の影を色濃く持ちながらも、ドラマとして視聴者の共感を得るために人間的な葛藤や料理というテーマを盛り込み、完全な史実再現ではなく、新たな物語として創作されています。
