韓国ドラマは、期待値が高い作品ほど「思っていたのと違う」と感じることがあります。

一方で、なんとなく再生した作品が予想以上に面白く、続きが気になって止まらなくなることも。

今回は、日本のNetflixで配信されている新作を中心に、期待せずに観たら大当たりだった韓国ドラマBEST10を選びました。

派手な宣伝や豪華なキャストだけではわからない、観始めてからじわじわハマる作品を紹介します。

第10位 エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち

正直、最初はよくある新人弁護士の成長ドラマだと思っていました。

ところが、観始めると裁判の勝ち負けだけではなくて、依頼人の感情まで丁寧に描かれていて、思った以上に引き込まれました。

大手法律事務所ユルリムに入所した新人弁護士カン・ヒョミン(チョン・チェヨン)は、正義感は強いものの、人の気持ちを読み取ることが少し苦手です。

そんなヒョミンを指導するのが、冷静で妥協を許さない敏腕弁護士ユン・ソクフン(イ・ジヌク)です。

ソクフンは仕事は完璧なのですがとてもクールで、「依頼人が本当に望んでいるものは何か」をヒョミン自身に考えさせます。

冷たい上司に見えますが、依頼人のために奔走するところが格好よかったです。

扱われる事件は、夫婦や家族、職場など身近な問題が中心です。

話が進むにつれて最初の印象が変わっていきます。

依頼人が抱えてきた傷や後悔に焦点が当てられているため、法廷ドラマに詳しくなくても入り込めました。

ヒョミンが失敗しながらも、自分なりの答えを見つけていく姿も応援したくなります。

静かに心へ残るエピソードがどんどん展開するため、視聴がとまらなくなりました。

第9位 交渉の技術

企業の買収や合併がテーマと聞いて、専門用語ばかりの難しいドラマなのかな?とあまり期待せずに見始めました。

ところが、実際に観てみると、相手の言葉や表情から本音を探る心理戦が中心で、予想以上に面白かったです。

物語の主人公は、白髪から「白蛇」と呼ばれるM&A専門家ユン・ジュノ(イ・ジェフン)です。

ジュノは約11兆ウォンの負債を抱えるサンイングループを立て直すため、会長から呼び戻されます。

初出勤したジュノが、グループの中心であるサンイン建設まで売却候補に挙げる場面から、社内は大混乱。

長年会社を支えてきた役員たちにとって、サンイン建設の売却は簡単に受け入れられる話ではありません。

それでもジュノは感情に流されず、買い手の事情や資金力を調べ、最終的に8兆5000億ウォン規模の交渉を進めていきます。

さらに面白かったのが、ゲーム会社チャチャゲームズの買収交渉の回。

交渉の途中で情報が漏れ、チャチャゲームズ側は別の会社から好条件を提示されます。

一度は買収に失敗したように見えますが、ジュノは慌てません。

チャチャゲームズが制作したゲームの中に、代表の初恋の女性を思わせる隠し要素があることに気づきます。

そして、競合会社のゲームにも同じ特徴が使われていることから、技術を盗用した証拠を見つけ出しました。

ジュノはその証拠を交渉材料にして、買収価格だけではなく、開発者たちが納得できる補償まで引き出します。

単に会社を安く買うのではなく、相手が本当に守りたいものを見つけ、それを条件に組み込むところが鮮やかでした。

日本企業との交渉では、相手の企業文化や人間関係まで調べたうえで距離を縮めていきます。

アクションシーンがなくても、「次は何を仕掛けるのだろう」とハラハラします。

企業ドラマは苦手だと思っていましたが、最後にはジュノの交渉が決まる瞬間を待つほどハマっていました。

第8位 トリガー

銃撃戦が続くだけのアクションドラマだと思っていたのですが、実際は「追い詰められた人の手元に銃が届いたらどうなるのか」が描かれた社会派作品でした。

銃器の所持が厳しく規制されている韓国で、出所不明の銃が宅配便によって一般市民へ届けられます。

最初に銃を手にするのは、長い間、公務員試験に挑戦しているユ・ジョンテです。

試験に合格できない焦りを抱え、予備校では講師から侮辱され、周囲からも見下されてきました。

これまで怒りをぐっと我慢し続けてきたジョンテのもとへ、突然ライフルと弾丸が届きます。

引き金を引けば、被害を受けていた側も一瞬で加害者になってしまう。

その変化が生々しく描かれており、銃そのものよりも人間の怒りのほうが怖いと感じました。

銃乱射事件の捜査に乗り出すのが、元軍人で現在は警察官として働くイ・ド(キム・ナムギル)です。

イ・ドは軍で狙撃手を務めていましたが、過去に銃で大切な仲間を失っています。

銃の扱いに慣れているからこそ、その危険性も誰より理解していました。

捜査の途中でイ・ドが出会うのが、自由奔放で正体のつかめないムン・ベク(キム・ヨングァン)。

ムン・ベクは違法銃器の流通に詳しく、イ・ドに協力するように見えます。

しかし、なぜそこまで銃に詳しいのか、何を目的に動いているのかはわかりません。

人懐っこく笑っていたかと思えば、次の瞬間には冷たい表情を見せるため、登場するたびに緊張しました。

物語が進むと、銃は学校や職場、家庭で苦しんできた人たちのもとにも届き始めます。

「銃がなければ耐えていた怒り」が次々に表へ出て、社会全体が崩れていく展開には現実味がありました。

キム・ナムギルの素早いアクションも見応えがありますが、一番心に残ったのは、イ・ドが最後まで人を救おうとするところです。

派手な銃撃戦を楽しむ作品ではなく、引き金を引く直前の人間の心を描いているところが、期待を大きく超えていました。

第7位 テプン商事

最初は、イ・ジュノの格好よさを楽しむ明るいお仕事ドラマだと思っていました。

ところが、1997年のIMF通貨危機で生活が一変した人々の姿が丁寧に描かれていて、想像していた以上におもしろかったです。

主人公のカン・テプン(イ・ジュノ)は、父親のお金で遊び歩き、クラブでは友人たちと派手に踊る自由な青年です。

会社の経営には興味がなく、父親から注意されても深く考えていませんでした。

しかし、通貨危機によって取引先が次々と倒産し、父親まで亡くなったことで状況が一変します。

テプンは社員の給料も払えないテプン商事を引き継ぎ、突然社長になることに。

貿易の知識も経験もないテプンを支えるのが、経理を担当していたオ・ミソン(キム・ミンハ)です。

ミソンは会社の帳簿を把握しているだけではなく、暗算も得意で、危険な取引には早くから気づいていました。

勢いで行動するテプンと、数字を確認してから動くミソンの組み合わせがとてもよかったです。

特に印象に残ったのは、置き場所のなくなった大量の生地を守る場面です。

テプンは配送トラックの前に立ちはだかり、どうにか商品を引き取りますが、借りた倉庫の屋根は壊れていました。

そこへ大雨が降り、テプンと社員たちは夜通しで生地を守ろうとします。

それでも資金不足は解決せず、社員たちは一人、また一人と会社を去っていきました。

誰もいなくなった会社で、テプンが手書きの名刺をミソンに差し出し、「一緒に会社を立て直してほしい」と頼む場面にはグッときました。

安全靴の取引でも、テプンは採算より先に商品のよさを信じ、500足を注文します。

ところが、製造会社が倒産し、代金も商品も失いそうになります。

追い詰められた経営者が借金取りから暴力を受けていると知ったテプンは、お金だけを取り戻して帰ることができませんでした。

経営者を助けたうえで、7000足の安全靴を売るという無謀な約束まで背負います。

計画性のなさにハラハラしますが、困っている人を見捨てられないところがテプンの魅力です。

会社を立て直す物語でありながら、社員同士が少しずつ家族のようになっていく過程も温かく描かれています。

期待せずに観始めたのに、いつの間にかテプン商事が倒産しないよう本気で応援していました。

第6位 恋は飴模様

記憶喪失と偽の恋人という設定を見たときは、少し古いタイプのラブコメかもしれないと思いました。

ところが、恋愛の可愛らしさと裏社会の緊張感がうまく混ざっていて、1話から一気に引き込まれました。

物語は、女性検事コ・ジウォン(ハヨン)が何者かに激しく殴られ、意識を失う場面から始まります。

ジウォンは市長と企業の癒着を調べるため、元暴力団員のペク・サンギル(ホ・ソンテ)が経営する会社を追っていました。

しかし、証拠をつかもうとしたところをサンギルに見つかり、命を狙われてしまいます。

ジウォンの始末を命じられたのが、元ボクサーでサンギルの部下として働くチャン・テハ(チョン・ヘイン)です。

テハは倒れているジウォンの顔を見た瞬間、彼女を殺さずに助けることを選びます。

目を覚ましたジウォンは記憶を失っており、身分証も携帯電話もありません。

そこへテハが現れ、「名前はコ・ウンセで、俺たちは2年間付き合っている」と、とっさに嘘をつきます。

さらに、祖母が営む飴店で働きながら、田舎の家で一緒に暮らしていたと説明しました。

高級車に乗って仕事をしていた検事が、突然、飴店で働く女性として生活することになる落差が面白かったです。

もちろん、元検事の勘は記憶を失っても消えていません。

ウンセは、テハが話す馴れ初めに矛盾があることや、家の中に恋人らしい思い出の品がないことを次々に見抜きます。

そして、本当に恋人なのか確かめるため、突然テハにキスをする場面には驚きました。

嘘がバレるのではないかと焦りながらも、キスを拒めず固まってしまうテハがかわいかったです。

テハは見た目こそ怖そうですが、ウンセの前では不器用で、同居生活にも落ち着きがありません。

一方のウンセは、自分の過去を知らないまま、テハに遠慮せず言いたいことをはっきり伝えます。

殺すよう命じられた相手を守りながら、偽の彼氏を演じるというテハの立場は、考えるほど危険です。

それでも、ウンセが笑えるように気を配り、村での新しい生活を守ろうとする姿を見ていると、いつの間にか応援したくなりました。

可愛い同居ラブコメの裏では、サンギルが行方不明になったジウォンを捜し続けています。

穏やかな村の暮らしと、追っ手が迫る怖さが交互に描かれるため、甘い場面だけでは終わりません。

チョン・ヘインの優しい表情と、元ボクサーらしい迫力のあるアクションを両方楽しめたのも大当たりでした。

第5位 Missホンは潜入捜査中

35歳の女性が20歳の新入社員になりすますと聞き、最初は設定に少し無理があると思いました。

ところが、パク・シネが真面目な金融監督官と若い新入社員を見事に演じ分けていて、回を重ねるほど面白くなりました。

舞台は、韓国がIMF通貨危機に直面する直前の1997年です。

金融監督院で働くホン・グムボ(パク・シネ)は、株価操作や裏金の不正を見逃さないことから、「汝矣島の魔女」と呼ばれています。

グムボは、ハンミン証券の裏金について調べるため、社内の情報提供者とひそかに接触していました。

しかし、情報提供者が不審な交通事故で亡くなり、捜査は打ち切られてしまいます。

事故ではなく口封じだと疑ったグムボは、亡くなった人物が残した秘密の帳簿を探すことに。

そこで、実の妹ホン・ジャンミの身分を借り、20歳の新入社員としてハンミン証券へ潜入します。

若者らしい服装に着替え、妹から言葉遣いや振る舞いを教わる場面から笑ってしまいました。

見た目は若く変身しても、中身は不正を許せない35歳の監督官です。

上司から理不尽な指示を受けても黙っていられず、つい相手を問い詰めそうになるたびに、潜入中だったことを思い出して態度を変えます。

さらに、入社試験では実力を隠すどころか最高得点を取ってしまい、早くも目立つ存在になってしまいました。

潜入先でグムボを待っていたのが、かつて結婚を約束していたシン・ジョンウ(コ・ギョンピョ)です。

ジョンウはハンミン証券の新社長に就任し、グムボのすぐ近くで働くことになります。

顔を見れば正体がバレそうなのに、グムボは「自分は妹のジャンミだ」と言い張ります。

ジョンウが何度も疑いの目を向けるため、いつ気づかれるのかとハラハラしました。

会社では、300億ウォン規模の不正な株取引の責任までジャンミに押しつけられます。

グムボは解雇を避けるため、取引を取り消す書類を求めて空港まで走り、出国寸前の投資会社社長を追いかけます。

若い社員を演じながらも、ここぞという場面では監督官としての判断力と行動力を発揮するところが痛快でした。

社員寮で同室になるコ・ボクヒ(ハ・ユンギョン)やカン・ノラ(チェ・ジス)との関係も、このドラマの魅力です。

最初はお互いに秘密を抱えて警戒していた3人が、会社の理不尽さに立ち向かううちに仲間になっていきます。

潜入捜査だけではなく、女性社員たちの友情や1990年代の会社生活もしっかり描かれていました。

難しそうな金融犯罪の物語を想像していましたが、コメディとサスペンスのバランスがよく、期待以上に気軽に楽しめる作品でした。

第4位 マンスリー彼氏

仮想空間で理想の男性と恋愛する設定を見たときは、イケメン俳優を次々に登場させるだけの作品だと思っていました。

ところが、恋愛から遠ざかった女性の寂しさや、傷つくことを避けたい気持ちまで描かれていて、想像以上に共感できました。

主人公のソ・ミレ(ジス)は、ウェブ漫画制作会社でプロデューサーとして働いています。

作家の機嫌を取り、締め切りに追われ、会社では次々に問題を任される毎日。

帰宅すると一人で食事をして眠るだけで、恋愛に使う時間も気力も残っていません。

そんなミレが偶然、仮想恋愛サービス「マンスリー彼氏」のテスト利用者に選ばれます。

専用の機器を装着すると、現実と見分けがつかないほどリアルな世界へ入り、好みに合った男性とデートを楽しめるサービスです。

仮想空間には、冷たそうに見えて実は優しい男性や、何でも完璧にこなす大人の男性など、韓国ドラマで一度は見たことのある理想の彼氏が登場します。

しかも、イ・スヒョク、ソ・ガンジュン、イ・ジェウク、オン・ソンウ、キム・ヨンデなどが仮想彼氏として次々に現れるため、これだけでも贅沢でした。

現実では仕事に振り回されているミレも、仮想世界では物語のヒロインになれます。

男性から優しく見つめられたり、ロマンチックな言葉をかけられたりするうちに、最初は戸惑っていたミレがサービスへ夢中になっていく姿も自然でした。

嫌になればログアウトでき、面倒な連絡も喧嘩もありません。

現実の恋愛より仮想彼氏を選びたくなる気持ちは、少しわかる気がしました。

一方、現実世界でミレと何かとぶつかるのが、同僚のパク・ギョンナム(ソ・イングク)です。

仕事ではライバルのような関係で、顔を合わせれば言い合いになることもあります。

仮想彼氏のように完璧な言葉をかけてくれるわけではありませんが、ミレが困っているときには黙って手を貸します。

ミレに彼氏がいないと知ったギョンナムが、遠回しに駆け引きするのではなく、これからは自分も行動すると宣言する場面も印象的でした。

仮想空間では理想どおりの恋愛ができるのに、ミレの心が動き始めるのは、予定どおりにならない現実の相手です。

この対比がわかりやすく、ギョンナムとの距離が少しずつ縮まるたびに楽しくなりました。

夢のような仮想デートを楽しむラブコメでありながら、「傷つく可能性があっても現実の恋を選べるのか」というテーマも描かれています。

軽い気持ちで観始めたのに、最後はミレがどちらの世界を選ぶのか本気で気になっていました。

第3位 わたしの完璧な秘書

正直、仕事のできる女性社長と男性秘書の恋愛と聞いたときは、よくある立場逆転ラブコメだと思っていました。

ところが、2人が相手の存在に救われていく過程を丁寧に描いていて、予想以上にハマりました。

ヘッドハンティング会社「ピープルズ」のCEOカン・ジユン(ハン・ジミン)は、優秀な人材を見抜く力を持つ仕事人間です。

会社の経営や取引先との交渉は完璧ですが、自分の食事や予定には無頓着。

社員の名前をなかなか覚えられず、机の上も書類で埋まり、仕事以外のことは大の苦手です。

そんなジユンの秘書として働くことになったのが、シングルファーザーのユ・ウノ(イ・ジュニョク)。

2人の出会いは、決してよいものではありませんでした。

ジユンが優秀な技術者を引き抜こうとした際、人事担当だったウノは社員を守るために彼女と対立します。

その後、会社を辞めることになったウノが、よりによってジユンの秘書として採用される展開が面白かったです。

ジユンは露骨に嫌な顔をしますが、ウノの仕事ぶりは文句のつけようがありません。

散らかっていたデスクを使いやすく整理し、予定を管理し、ドアをこっそり使いやすく付け替えたりします。

取引先へ向かう車の中でジユンが眠ってしまうと、起こさずに休ませる気遣いも自然でした。

仕事ができるだけではなく、相手が何を必要としているのかを先回りして考えられるところが、本当に完璧な秘書です。

また、ウノは一人娘のビョルを育てるシングルファーザー。

朝食を作り、娘の髪を結び、休みの日にはネイルもしてあげます。

会社では頼れる秘書なのに、家では娘の言葉に振り回される普通のお父さんになるところも温かかったです。

ジユンもビョルと出会い、これまで知らなかったウノの家庭での顔を見て、少しずつ警戒を解いていきます。

特に印象に残ったのは、酔っぱらって居眠りをするウノとジユンのくっつきそうでくっつかないシーン。

すぐ近くにウノの顔があり、見とれているジユンの表情がかわいくて、「はやく結ばれてほしい」と思いました。

ウノもジユンの、仕事への情熱や不器用な優しさを理解していきます。

上司と秘書という関係を保とうとしながら、視線や沈黙に気持ちが表れてしまう2人がとてもよかったです。

疲れているジユンの前に温かい飲み物を置くことや、黙って隣を歩くことなど、大げさではない行動にウノの愛情が詰まっています。

恋が始まってからも、ウノはジユンの仕事を尊重し、無理に生活を変えようとはしません。

どちらか一方が助けるのではなく、お互いの足りない部分を少しずつ補っていく関係が素敵でした。

刺激の強い展開は少ないのに、2人が目を合わせるだけでドキドキします。

軽いオフィスラブのつもりで観始めましたが、大人同士の穏やかな恋にすっかり沼へ落ちました。

第2位 未知のソウル

双子が人生を入れ替える物語と聞いたときは、明るいコメディを想像していました。

ところが、仕事や家族の期待に押しつぶされそうな人の苦しさが丁寧に描かれていて、観るほど心へ残る作品でした。

双子の姉妹ユ・ミジとユ・ミレを、パク・ボヨンが一人二役で演じています。

妹のミジは、かつて将来を期待された陸上選手でした。

しかし、けがで走れなくなったあと目標を失い、故郷で祖母の世話をしながら短期の仕事を転々としています。

一方、姉のミレは学生時代から成績優秀で、ソウルの公共企業に勤める会社員です。

家族からは順調な人生を送っていると思われていますが、職場では上司から執拗な嫌がらせを受けていました。

成果を奪われ、周囲の社員からも見て見ぬふりをされ、心身ともに限界まで追い詰められています。

姉の苦しみに気づいたミジは、子どもの頃にも行ったことがある「入れ替わり」を提案します。

ミジがミレとしてソウルの会社へ行き、ミレはミジとして故郷で暮らすことに。

同じ顔でも、姿勢や話し方、表情がまったく違うため、本当に別の俳優が演じているように見えました。

ソウルへやって来たミジは、姉を苦しめていた上司と正面から向き合います。

ミレなら黙って頭を下げる場面でも、ミジは納得できないことをはっきり聞き返します。

そのため周囲からは急に性格が変わったと思われますが、ミジは職場に残された記録をたどり、姉が何をされてきたのかを少しずつ知っていきます。

一方、故郷へ戻ったミレは、祖母の手伝いや農作業をしながら、立ち止まる時間を持つようになります。

そこでは、イチゴ農園を営むハン・セジン(リュ・ギョンス)と出会います。

結果や肩書で人を判断しないセジンのそばで、ミレが少しずつ自分の気持ちを話せるようになる過程がよかったです。

入れ替わったミジがソウルで再会するのが、幼なじみの弁護士イ・ホス(パク・ジニョン)です。

ミジは姉のふりをしますが、ホスは話し方や反応の違いから、目の前にいるのがミレではないと気づき始めます。

子どもの頃から双子を見てきたホスだけが、外見ではなく中身でミジを見分けるところにときめきました。

ただし、ホスも順調に見える人生の裏で、事故の後遺症や聴力の問題を抱えています。

つらくても平気な顔をしてしまうホスと、明るく振る舞いながら自信を失っているミジは、どこか似た者同士です。

どちらかが一方的に救うのではなく、弱い部分を見せながら支え合っていく関係が自然でした。

入れ替わりによって、ミジとミレは姉妹の人生を代わりに生きるだけではありません。

相手がどれほど苦しんでいたのかを知り、自分自身が避けてきた問題とも向き合っていきます。

「頑張ればすべて解決する」と簡単にまとめず、休むことや助けを求めることも前へ進む方法だと描いている点も心に残りました。

静かな作品なので最初は期待していませんでしたが、観終わるころには登場人物全員の幸せを願っていました。

第1位 暴君のシェフ

現代の天才シェフ、ヨン・ジヨン(ユナ)が朝鮮時代へタイムスリップし、悪名高い王イ・ホン(イ・チェミン)と出会う宮廷ロマンスです。

料理、タイムスリップ、暴君との恋という設定だけを見ると、王道の要素を組み合わせた作品に思えます。

ところが、いざ観始めると料理の見せ方と二人の掛け合いが想像以上に楽しく、気づけば次の話へ手が伸びていました。

物語の始まりは、ジヨンがフランスの料理コンクールで優勝する場面です。

調理中にコンロが使えなくなるトラブルに見舞われますが、藁を燃やして鹿肉を燻すという大胆な方法で乗り切ります。

最初の数分だけで、彼女が知識だけでなく、瞬時の判断力にも優れた料理人であることが伝わってきます。

ところが韓国へ帰る飛行機の化粧室の中で、父から預かった古い料理書を開いた瞬間、皆既日食の光に包まれて朝鮮時代へ。

森の罠にぶら下がった状態で目を覚まし、狩りに来ていたイ・ホンと遭遇します。

ジヨンは彼を王だとは思わず、時代劇を撮影中の俳優だと勘違い。

遠慮なく反論し、しまいには縛り上げてしまうため、二人の出会いからして波乱だらけです。

この回に登場するのが、コチュジャンバターのビビンバです。

未来から持ってきたコチュジャンとバターに、その場で手に入れた野菜や山菜を合わせ、限られた道具で一皿を完成させます。

ひと口食べたイ・ホンの表情が変わり、亡き母との記憶がよみがえる場面は、このドラマの魅力を端的に表していました。

ジヨンの料理は、単に王の舌を満足させるだけではなく、香りや味を通して、イ・ホンが心の奥に閉じ込めていた寂しさや記憶まで呼び起こしていきます。

味覚が鋭く、料理に妥協しないイ・ホンと、現代の技術を武器にするジヨン。

料理を挟んでぶつかり合う二人のやり取りにはテンポがあり、緊張感のある宮廷が一気に明るくなります。

やがてジヨンは宮廷で料理を作ることになり、フランス料理の技法と朝鮮時代の食材を組み合わせた献立を次々と披露。

豪華な宴の料理から、王のために作る素朴な一皿まで、それぞれに物語が込められているのも見どころです。

さらに明の使節から料理対決を持ちかけられ、国の威信を背負って厨房の仲間たちと挑む展開へ。

現代なら簡単に手に入る材料や器具が存在しない中で、代用品を探し、火加減を工夫し、宮廷料理人たちの力を借りて完成へ近づけていきます。

その過程が丁寧に描かれているため、料理対決にもスポーツドラマのような熱さがありました。

一方、宮中では側室カン・モクジュ(カン・ハンナ)の策略や、王位をめぐる陰謀も動き始めます。

ジヨンが王の信頼を得るほど危険な立場へ追い込まれ、楽しい料理ドラマだけでは終わらない緊張感が加わってきて物語は最高潮に!

そして最大の魅力は、ジヨンとイ・ホンの距離が料理を通して少しずつ変わっていくところです。

最初はジヨンを怪しい女として警戒していたイ・ホンが、彼女の料理とまっすぐな言葉に触れ、次第に素の表情を見せ始めます。

威圧的だった王が、好物を前にすると分かりやすく機嫌を直す姿もどこか愛嬌があってかわいい。

ユナは、現代的な感覚を失わずに宮廷を生き抜くジヨンを軽快に演じています。

相手が王でも言いたいことを飲み込まず、料理人として譲れない部分は守り抜く姿が気持ちよく映りました。

イ・チェミンも、冷酷な暴君としての顔と、愛情に飢えた青年の繊細さのギャップが魅力。

二人のコミカルな掛け合いと、ふとした瞬間に漂う切なさのバランスが絶妙です。

期待せずに再生したはずが、料理の完成を待ち、恋の進展を気にし、宮廷の陰謀にまで巻き込まれていました。

見た目は華やかな時代劇ですが、中心にあるのは、ひと皿の料理が誰かの心を救うという温かな物語です。

「次は何を作るのだろう」と楽しみにしているうちに、登場人物にも物語にもすっかり愛着が湧いてしまう。

思わぬ沼に落ちた作品を選ぶ今回のランキングでは、文句なしの第1位です。

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